仲間たちと湖西をオーガニックで盛り上げたい

一般社団法人日本ハーブ研究開発機構 近江おごとハーブガーデン 山本真理さん

大津市

合同会社Organic herb center

山本 真理さん

大阪吹田市に生まれ育つ。エステティシャン・アロマセラピー講師などの起業を経て、2016年に滋賀県に移住。近江おごとハーブガーデンの運営に携わり、ハーブをはじめコメや大豆・大麦などの有機栽培に取り組む。

[農地面積]-

[栽培品目]ハーブ・米・大豆・大麦ほか

[営農開始]2016年

[主な販路]直接販売ほか

エステティックサロンで独立したい

 大阪府吹田市で生まれ育ち、大学では有機合成化学を専攻し、卒業後は企業の試験室に数年間勤務するが、エステティシャンに転職した。真理さんは「特にエステをやりたいってわけではなかったんですが、とにかく手に職をつけて自分一人でも生きていけるようになりたかった」と話す。就職したエステティックサロンの本社がフランスにあり、年に1回フランス人のトレーナーに教わった。フランスではエステティシャンは医者と同じぐらいに信頼されていることに衝撃をうけたという。その後、指名のお客様がつくようになり、エステティックサロンを立ち上げてセラピストとして独立。それまで趣味で楽しんでいたハーブやアロマテラピーを自分のエステの技術と組み合わせることができないかと植物療法をスタートさせた。「一般的な化粧品の代わりに、ハーブや植物を使うボディケアは効果があることを、お客様にも感じてもらえたのですが、お客様が自分自身だけでホームケアできないことが多かった。」真理さんは、多くの人に伝えることの重要性を感じ、植物療法のスクールを開業した。セラピストとしてスクール講師を続け、美容を通じてお客様の性格が明るく変わったり、元気になったりする姿をみて、仕事にやりがいを感じてきたという。

近江おごとハーブガーデンのサインボード
琵琶湖が眺望できる坂の上にある近江おごとハーブガーデン

地産地消の植物療法

 真理さんは、大阪府の最北端にある能勢地域の農家研修に行った際、地方もいいところだなと感じ、子育ての環境を求めて能勢への移住を検討し始めたが、なかなか物件が見つからなかった。2016年に現在の職場となる近江おごとハーブガーデンの立ち上げのために、頻繁に大阪から車で滋賀に通いはじめ、家族で滋賀に移住することになった。「滋賀に来たことは、すごい転機で、それまではハーブを輸入するものだったけれど、ハーブを作る側になるとは想像しなかった」と話す。
 近江おごとハーブガーデンは、オーガニックのハーブ栽培を手掛け、一般の見学をはじめ、ハーブやアロマテラピーを楽しむワークショップの実施、専門家になるための資格取得講座がうけられるスクールなどの事業を展開している。ハーブガーデンが出来て以来、周辺の地域の人との交流のなかで、田んぼをしてほしいとか声がかり、真理さんは仲間たちとともに、米と麦と大豆も栽培している。田畑の地理的制約もあり、すべての作物にオーガニック認証は取れてはいないが、農薬不使用栽培をしている。
「私たちの体って60兆個ぐらいの細胞からできていて、毎日食べるもので自分の体って作られています。安心して食べれるものを意識すると、お野菜やお米とか大豆も結果的に化学肥料不使用、除草剤不使用、肥料も厳選して食物に合わせて色々考えて作っていきたいと思っています。」植物療法士として真理さんは、食事と休養と運動この三つのバランスが取れる生活習慣をお客様や生徒さんたちに提案している。実際に農作業をするようになって、農業自体がセラピーに結びつくことに目をつけ、「薬草日和」いう農業体験イベントなどを定期的に実施し、農業の魅力を伝え、作業する自分自身も癒される体験をこれからも増やしていきたいと考えている。ハーブだけでなく、将来的にはハーブガーデンが手掛ける田んぼ全体で、お米や麦についても有機認証を取っていきたいと考えているが、自分たちだけではなく村全体で取らなければ難しいと感じ、「薬草日和」などの活動がきっかけとなり、「地域でもっとオーガニックな農業を志す人が増えてほしい」と真理さんは語る。

畑での農作業の様子
試行錯誤し日本の気候にあうオーガニックハーブ栽培をめざす

 2022年3月に、近江おごとハーブガーデンが有機栽培したビール用二条大麦をつかった、大津市のクラフトビール醸造所「近江麦酒」が手掛ける地産地消 地元産原料100%にこだわった産学官連携「近江麦酒 THE LOCAL」が発売された。「小さな区域で、何を食べてもオーガニックっていうそういうものを作りたい」と真理さんは意気込む。
 近江おごとハーブガーデンにほど近い千野という限界集落に、真理さんは仲間たちとともに、古民家をリノベーションし、月子茶屋というカフェを運営し、キムチづくり、薬膳、こだわりランチ、ヨガなど様々なワークショップを開催している。この月子茶屋は、すぐそばに元三大師の母・月子姫を祀る安養院妙見堂があり、その力にあやかって、おごと、坂本、仰木、そして近江全体の活性化を目指そうという思いが詰まっているという。季節や時間の流れを楽しむ空間をつくり、昔ながらの習慣や季節の手仕事、村の行事、暮らしの知恵などを見直し、受け継ぎ、伝えていく場所を目指している。「個人プレーが得意なんですが、スタッフや仲間のみんなが適材適所につながって、作りかけているものをどんどん形にしていきたい」と真理さんは話す。

月子茶屋の玄関口と看板
リノベーションした民家を拠点にした月子茶屋