大粒のぶどうや梨が並ぶ直売所に、元気よく接客する女性がいる。香川県小豆島出身の佐伯美矩さんだ。竜王町の㈱ファームタケヤマに入社して2年目になる。
前職から転職を考えたとき、幼い頃に祖母の畑を手伝い褒められた記憶が蘇った。実家に田畑や果樹はあったが、起業するほどの技術や力量はないと、就職就農を決めた。
就職先は農業専門の求人サイトで見つけた。「求人数は意外とありました。滋賀は家賃が安く、生活費を抑えられることが決め手のひとつ。あとは美味しいものが好きなので(笑)」と屈託ない。
技術的なことは上司から学ぶ。約1ヘクタールのぶどう園のほか、梨やいちじくの生育管理をする。冬場は露地野菜の収穫も行う。
「女子という理由で困ったことはありません。背が低いので剪定のとき困りますが、自分専用の踏み台を買ってもらいました。トイレが遠いのは難点ですが、私の入社をきっかけに、社長が10時と15時に休憩時間を設けてくれました」。佐伯さんが快適に働けるのは、女性社員への社長の配慮もあるようだ。
直売所には頻繁に常連がやってくるし、電話もよく鳴る。ハキハキと応じる佐伯さんは「農業は地域の人と関わりが深い仕事。接客も得意に越したことはないですね」と語る。
「夢は美味しい果物を、思いっきりつまみ食いすることです」と茶目っ気たっぷりな佐伯さんは、間違いなく地域に愛されている。