近江八幡のヨシ繁る水郷地帯北之庄に、一人で新規就農し有機農業で稲作に取り組む女性がいる。百菜農園の廣部里美さんだ。
福井で生まれ育ち、東京の大学で農業を学んだのち、就職のため滋賀に移住。NPO法人に転籍し、「農のある暮らし」を提案してきた。今は独立して農地を受け継ぎ、小規模でも安定した農業のあり方を模索している。
おばあちゃんっ子だったので、何でもよく知る地域のお年寄りが大好き。農業のことはもちろん、鮒寿しやヨシの葉を使ったちまきの作り方を教わったり、舟に乗せてもらったりして、時には旅人にその魅力を伝える。
「農家になって尊敬する人に出会えました。今の自分があるのは、見返りを求めず助けてくれた人達のおかげ。米づくりは人との関わりそのもの。学ぶことは多いです」と語る。お年寄り達も、北之庄の自然を愛し、謙虚に教えを乞う廣部さんを温かく見守る。
そんな廣部さんにはファンが多く、田畑に人がよく集まる。例えば、田植えや稲刈りにSNSで呼びかけると、農業体験したい大学生や社会人、家族連れが手伝いにくる。農薬を使わず、魚粉や米ぬかで土づくりされた田畑は、幼い子どもも安心して遊ぶことができる。
また、人通りの多い道路に面した農地には、レンコン畑がある。排水が悪く、地元農家も手を焼く農地にレンコンを植えたのだ。お盆の頃には美しい蓮が咲き、毎年開かれる蓮茶会には、他府県からも若い女性が訪れ、本格的な中国茶とスイーツをたしなむ。蓮の葉でいただく象鼻杯(ぞうびはい)が人気だ。
目下の課題は、収入を増やすこと。独立して貯金の大半は生活費に消えた。米の付加価値を高めるために、ギフト商品「赤ちゃん体重米」の販売に力を入れるが、次の収穫までに売り切れる。規模を拡大しようにも、まわってくる農地は耕作条件の悪い土地が多い。そのため、現在はそれを逆手に農業体験プログラムを企業に提供するなど、増収の方法を模索中だ。
人の往来が増え、畑の仲間がますます増えることに期待する。
こぼれ話
- よそ者が土地を借りるためには、信用してもらえる行動力とコミュニケーション力が必要。
- 中古の大型機械を買ったら、修理代でお金が飛んでった…とほほ。
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