東近江市の猪田さん一家は、母の道代さんを筆頭に、三人の娘たちが父の農業を手伝う。
父は、建築業を営みながら米をつくる兼業農家だったが、建築業を引退。融資や税金などが優遇される「認定農業者」となった。
そして田を増やす傍ら、女性も手軽に収穫できる花菜の栽培を開始。実エンドウ、ブロッコリー、カボチャなど、少しずつ栽培品目を増やすと、次第に娘たちも手伝うようになった。
収穫した野菜は、JA直売所で販売したり、市場に出荷したりしている。4年前からJAの契約栽培で加工キャベツも作付している。
娘たちはそれぞれ結婚し、別の市町に住む。なかには、片道約1時間かけて通う娘も。「素直に農業が楽しいんです!」という。
娘の夫達は、妻が実家の家業を手伝うことについて、「日中は好きにして良いと言ってくれています。休日は夫が農作業を手伝うことも。トラクターの運転など、非日常を楽しんでいるようです」。
朱子さんは3人、郁子さんは2人、律子さんは3人(3人目を妊娠中)の子を持つお母さんでもある。未就学の子どもたちは、交代で面倒をみる。
とにかく家族同士で仲が良い。常に笑い声が響いている。そしてその内容は、ほとんどが食事の話題だ。「母の料理が本当においしいんです」と娘たち。いつも昼食は一緒に食べる。農家の娘だけあって食への関心も高い。
しかし、最初からそうだったわけではない。娘たちは農業を手伝うようになって「おかげで食べるものには困りません」。そう言いながら、一方でその苦労を知り、少し傷んではいるが食べられるものや、規格外品を安易に捨てられなくなった。そうして持ち帰った野菜で、いろいろ試作しては感想を述べ合う。
「今は野菜をつくることで精一杯。でもいつか、加工品や農家レストランをつくるのが夢です」と、はにかみながら語った。
農家の高齢化が問題となるなか、彼女たちのような女性の活躍も期待される。