片山恵美さんは、26歳で就農するまでを「休暇とお金のために働いてました」と振り返る。
ある日、農家の両親の畑を手伝うと、土に触れ汗を流すことが心地よく、次第に農業を一生の仕事にしたいと思うようになった。
就農して祖母と過ごす時間が増えた片山さん。「機械に頼らない昔の農業や、四季に合わせた生き方を知ることで、より食の大切さやありがたみを感じるはず」と、5年前から味噌づくりワークショップを開催している。回を重ねるごとに、使用する大豆を在来種「みずくぐり」にしたり、種まきや収穫の体験会もしたりするなど趣向をこらす。親子の参加者が多く、延べ200人以上が参加した。
また、山のふもとに位置する片山さんの畑は、近年、猪などの食害を受けるようになった。料理研究家とともに獣害の勉強会を開催したところ、大阪など遠方からも若者が集まり、好評を博した。「里山の変化や農家の実態を共有でき、やって良かった」という。
これらのワークショップは、消費者と交流できる貴重な機会。売上には直結しないが、商品のPRも兼ねるなど工夫する。
一方、経営者の視点も忘れない。近畿地域農業青年会議のプロジェクト発表では、商業高校や前職の経験を生かし、野菜の栽培効率や収益性の研究で最優秀賞に選ばれた。
現在、売上の8割は直売所が占める。主婦の利用客が多いことを知ると、カットして使いやすい大きさで販売した。見やすいPOPづくりにも心がけている。2割は飲食店や個人だが、「飛び込み営業はしません。小規模農家は生産が不安定なので、農業を理解してくれるお客様のほうが長くお付き合いできます。」という。
取材時は臨月の片山さん。「周りに心配をかけながらも、妊婦はどこまで農業できるか知りたかったんです」と作業をこなす。「お腹の子に今日も頑張ろな~と話しかけます(笑)」。
そんな片山さんの夢は、人に感動を与える野菜を作り、次世代に食と農の素晴らしさを伝え続けること。ママ農家の活躍が楽しみだ。
こぼれ話
- お客様と信頼関係を築くため、時には取引先にうかがい自分の野菜がどのように使われているかを知るのも大切。
- 妊娠中は自分のペースをつかむことが大切。決して無理はしないこと。夏場は水分と塩分の補給をしっかりと!
- 飲食店からの要望は小ロットが多いため、費用対効果の見極めが肝心。これが結構難しい。