竜王町で50年以上にわたり営まれる古株牧場。その直営ショップ「湖華舞」の工房から、つなぎ姿の古株つや子さんが現れた。チーズをもっと知ってもらいたいと、3店舗目を展開したばかりで多忙な日々だ。
当初は、チーズがミルクからできていることくらいしか知らず、本当にゼロからのスタート。チーズの基礎知識を学ぶセミナーで、講師に相談し出向いたフランスで、運命的な出会いを果たした。代表作「つやこフロマージュ」を作るきっかけとなった、酸凝固のチーズ「サン・マルスラン」だ。熟成の進み具合で様々な味を楽しめる。絶対に作りたいと思った。
帰国後、北海道でチーズの作りかたを学び、「これで自分のチーズがつくれる!」と奮起したのも束の間、自社ではまったく思い通りにいかない。すでに補助金で300万円の熟成庫を購入しており、後に退ける状況ではなかった。「今日もつくらなあかんのか」と、精神的につらい日が続いた。
それでも試行錯誤を繰り返し、どうにかチーズを理解できるように。そして、さらに技術を高めようと、原点のフランスへ渡り、製造で行う全てのことを吸収しようと、酸度やpHなどを逐一聞き出した。
ある日、研修先の農家から「毎日、天候や牛の調子でミルクは変わる。それに合わせて私たちは作るだけ。数値だけが問題ではない」と言われ、衝撃を受けた。素材の状態を見極めて作れば、それほど難しいことではなかったのだ。
それから周りからの評価がガラリと変わった。納得いくものを出せるようになり、仕事のモチベーションも変わった。
現在は、自分のチーズを「普段の食卓にある、漬物みたいな存在にしたい」と、邁進する日々。その努力が実り、全国から注文が寄せられている。
夢は、「湖華舞の乳製品だけでなく、古株牧場の肉や米も日本のトップブランドに育て、業界を牽引するスペシャリストであり続けること」と果てしなく広がる。
補助金制度
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