夢は「まちの台所」 、近江野菜で消費者と生産者をつなぐ

食まちアグリゲーション 渡辺維子さん

守山市

食まちアグリゲーション

渡辺維子さん

公益社団法人で事務局長を務めたのち、FM滋賀のレポーター、JA直売所を経て2015年就農。少量多品目で年間約100種の野菜を育てる。孤食による偏食の改善と、近江野菜の生産者と消費者をつなぐ役を目指し、農業の傍ら、弁当販売などに取り組む。品のある語り口調と、物怖じしない行動力で周囲を巻き込む。

[農地面積]70a

[栽培品目]野菜

[営農開始]2015年

[主な販路]道の駅・ホテル・飲食店・直売

 「ソーシャルビジネスに関心があり、農業はそれを叶える手段なんです」。そう語るのは、食まちアグリゲーションの渡辺維子さん。高齢化や共働きが引き起こす孤食の問題を、近江野菜で解決したいと、食に繋がりの深いアグリビジネスで起業することを決意した。
 しかし「当時の私は、農業のことをあまりに知らなかったので」と、FM滋賀の番組制作&レポーターに応募し、1年間で100名の農家を取材した。
 農業の大変さに気づき始めた渡辺さんだったが、その後1年勤めたJA直売所で、どの野菜も美味しくつくる生産者に出会い、畑に通ううち、農地と機材を借りられることに。大きな初期投資もなく、就農することができた。
 そんな渡辺さんの夢は、誰でも気軽に食事したり、惣菜を買い物したりできる「まちの台所」をつくること。
 ある日、ラーメン屋で夢を語ると、定休日の店舗を貸してもらえることに。場所は大津駅前のビジネス街。自分の力量を考えて、弁当とグリーンスムージーを販売することにした。驚くことに約9割がリピーターだ。

弁当販売を始めた頃は、慣れない作業と衛生面のプレッシャーで、朝が来るのが怖くて夜も電気を消せない日が続いた。
弁当販売を始めた頃は、慣れない作業と衛生面のプレッシャーで、朝が来るのが怖くて夜も電気を消せない日が続いた。
近江野菜たっぷり弁当。この日は空芯菜とひき肉のピリ辛炒めやキュウリのわさび漬けなど、近江米にぴったりの美味しくからだに優しいおかずがたっぷり。
近江野菜たっぷり弁当。この日は空芯菜とひき肉のピリ辛炒めやキュウリのわさび漬けなど、近江米にぴったりの美味しくからだに優しいおかずがたっぷり。

 野菜の対面販売も同時に行う。客の好みを把握できるし、自分で育てた野菜なので、説明に説得力もある。弁当に規格外品を使えるので廃棄野菜も減った。農業が、ビジネスの強みになっている。
 しかし、道の駅などにも出荷すると、新たな課題に直面。「消費者は安心安全を求めるけれど、消費行動に結びついていない。安全を保証するために必要な、外敵から作物を守るための労力や人件費が、理解されていないんです」。
 かつては、自らもそうした消費者だったと話す渡辺さん。しかし、気づいたことを声にすることで周りに影響を与えることはできると、「近江野菜をつなぎ隊」を立ち上げ、食に関心の高い女性たちと活動する。
 最終的には「まちの台所」が、地域のコミュニティとなり、農家を買い支えできる仕組みにしたいと考える。渡辺さんの周りを巻き込む力で、きっと実現するだろう。

野菜の対面販売も行う。
野菜の対面販売も行う。
『近江野菜をつなぎ隊』の活動。管理栄養士とともに、近江野菜の調理実習や農業体験などをする。「いろんなコラボのお誘いがあるので、隊員でチャレンジしたい人がいればビジネスチャンスにしてほしい」。
『近江野菜をつなぎ隊』の活動。管理栄養士とともに、近江野菜の調理実習や農業体験などをする。「いろんなコラボのお誘いがあるので、隊員でチャレンジしたい人がいればビジネスチャンスにしてほしい」。

渡辺さんの一日のスケジュール

畑の日

05:00 起床・朝食
07:00 袋詰め
10:00 出荷
11:00 農作業
12:00 昼食
13:00 農作業
19:00 後片付け
20:00 夕食
21:00 自由時間
24:00 就寝

お弁当販売の日

04:00 起床
05:00 朝食
06:00 お店準備
07:00 仕込み開始
11:00 お弁当販売
14:00 昼食・片付け・仕込み(翌日用)
19:00 夕食・備品準備
23:00 就寝